『ガンプの謎』は初代ゼビウス(特にAC版)ファンからは、とかく「謎解きが邪魔」というレッテルを張られることが多く、正当な評価を下されなかったであろう作品である。
しかし、『ガンプの謎』は腰を据えてプレイすればFCシューティングの中でも指折りの完成度をもつ。
ここではあえてページを裂き、これまで魅力を受け止めきれなかったプレーヤーが改めて再評価できるようにしてみたい。
まず、「別ゲームのようになってしまった」という考え方についてである。
これには、「エリアループの謎に回答がもたらされた」と解釈してみてはどうだろう。
初代ゼビウスが16エリアでループするゲームであることは知られている。だが、「何故そうなっているか?」については、あまり問題にされてはいなかっただろう。
しかし、『ガンプの謎』を通して、「ガンプのESP(超能力)で時間軸(時空)が ねじ曲がった世界を繰り返している」という解釈が可能になったとは思えないだろうか?
▲シオナイトが自爆する場面はガンプの
呪縛から逃れる名シーンともとれる
※画面は通常のファミコン版です
そして、『ガンプの謎』においては、ソルグラード(ファントム)やシオナイトが別行動で時間軸(ガンプのESPによる呪縛)の謎を解きながらミッションが遂行されていると想像すると、SFシューティングとしても非常にドラマチックな展開が込められているものとして、最大限の評価を認めることもできるようになるだろう。
現在では『ガンプの謎』の謎解き要素(クリア条件)は簡単に知ることができる。その分、代わりとしてドラマチックに展開するシナリオ優先型のシューティングの先駆けとしてとらえることも容易となっている。
何より、ガンプ自体を「超能力を使えるまで成長したAI(人工知能)」として当時よりすんなり解釈できてしまう現代だからこそ、このようにシナリオ上の解釈で『ガンプの謎』の重要性をはっきりと認め直すこともできるはずだ。
▲AC系統のシリーズでは攻略のために
倒してはいけないゾルバクが関わる
※画面はAC版ゼビウスです
『ガンプの謎』が初代ゼビウス(特にAC版)ファンからは「謎解きが邪魔」と言われることに対するもう一つの回答として、「知っていなければ抜けられない」という前提条件について 改めて見直してみてほしいというものがある。
まず、AC版初代ゼビウスでは敵レーダーの設定である地上物キャラ(ゾルバク)を上手く処理し、「TRPG的にダイスロールで設定された敵出現テーブル」を調整することが攻略の最大の糸口となっている。
これは、いくつかの固定敵以外は「難易度を変化させる隠し数値」によってその画面に登場する空中敵が決められている、という暗黙の前提条件が存在していることについての話である。
▲アレンジメントは謎解きをしていないと
嫌な場面で嫌な敵が暴れる
※画面はゼビウスアレンジメントです
どういうことかといえば、AC版系統のゼビウスでは「地上物をわざと残して常時 難易度調整する必要がある」ということであり、どのゾルバク(四方向に赤い線の付いた丸型地上物)を残しておくのかを先に熟知していなければ有利に展開させる方法が全くわからないという捉え方も可能なのである。
(AC版系統のゼビウスの場合、より高得点で先に進むプレイには必須の知識である)
このAC版系統のゼビウスでの「ゾルバクを残した敵出現テーブル(ダイスロール)調整」が極度に推し進めらたものが『ゼビウス アレンジメント』と捉えることもできる。
(アレンジメントは敵出現テーブルが2枚に倍増しているうえにランダム化されており
「知っていても運がなければ抜けられない」という、より先鋭化した作りがなされている)
余談になるが、コンシューマー系からのファンが『アレンジメント』こそ「別物」と受け止めることが多いのも、この難易度調整に対する受け止め方がベースであるように思える。
▲『ガンプの謎』にゾルバク調整はなく
空中敵はスクロール位置で決まる
※画面は通常のファミコン版です
『ガンプの謎』においては、「敵出現テーブル調整(ゾルバク調整)」は必要ない。
「エリアのどの場面でどの敵が出るか」は既に決まっているため、「地上物をわざと残して難易度調整する必要はない」のだ。
そして、これを「つまらない」ととるか、「余計なことを考えずに済む」ととるかで『ガンプの謎』に対する評価の仕方が180°変わる可能性もある。
言い方を変えると、AC版初代やアレンジメントにおいて「なぜ普通にやるとテラジやフロッサーなどの空中敵が暴れて死ぬのか」の方が「謎解きとしてはより難解で労力が必要」ということをまず思い出してほしいのである。
この、いわゆる「ゾルバク調整」と呼ばれる難易度調整がないということは、AC版系統を信奉する人にとっては常識(システムの根幹)を丸投げされる格好かも知れないが、そこにかかる労力(相当量の暗記)が必要なくなった、つまり「キャラ送りのタイミングにさえ気を付ければ非常に遊びやすい」と受け止めれば『ガンプの謎』は“シリーズ中トップレベルに遊びやすいゼビウス”、という再評価の道もあるのだ。
▲『ガンプの謎』にはゼビ語以外に
ムー文字も存在する
※画面は通常のファミコン版です
「謎解き」という名の呪縛から解き放つため、より語気を強めた切り口を求めるならば、『ガンプの謎』は「想定されるシナリオがすでにあり、その通りに進める必要がある」という いわば、“原作付きゲーム”として“シナリオ重視”の構図が強化された続編ととらえれば、エリア進行をよりドラマチックに体感することができるのだ。
SFシューティングファンにとって この「シナリオ体感」は「最高の体験」の一つでもある。「シナリオ進行制のドラマチックシューティングの一つの形」とみなすことも可能になるだろう。
『ガンプの謎』に対するいわくに、「開発者が違う」というものがある。
しかし、AC版初代のイラスト担当の遠山茂樹 氏のインタビュー中の画像を見てもらいたい。
これは、作品集インタビューの前編に公開された、初代ゼビウスのアンドアジェネシスの形状の秘話に掲載されている画像をつないだものである。
初代ゼビウス開発版における円形のアンドアジェネシスの画像を見てほしい。この形状は『ガンプの謎』の最終ボス、ブラグリーズとほぼ同じだ。
開発側でかなり密接なやり取りが行われていなければ、このように没キャラを拾い上げたような最終ボスが登場したりはしないだろう。
▲ブラグリーズは開発段階の「ゴーフル」そのままを思わせる形状だ
※画面は通常のファミコン版です
憶測の域を出ないまでにしても、「別ゲームのようになってしまった」という考え方についても、かなり周到に設定レベルまで意識した続編制作が行われていたという可能性を感じて見直すことにもなるはずだ。
▲PCE版『ファードラウト伝説』には変形移動時のブラグリーズを思わせるキャラが登場する
※画面はPCE版『ファードラウト伝説』です
なお、余談だが、このブラグリーズに似た形状で合体・分離を行うキャラがPCE版『ファードラウト伝説』に登場する。オマージュなのか偶然の類似なのかは不明だが、こうしたところで後年にも『ガンプの謎』が意識されていたことについての可能性を感じることもできるだろう。
▲より後年の『アレンジメント』には
『ガンプの謎』を意識したらしい構造物も登場する
※画面はゼビウスアレンジメントです
それでは、この項目についてはこのあたりにしておこう。これまでにプレイしたことはあっても気付いていなかったことがあった場合などには、ここまでに見てきた内容を通して再び触れてみてほしい。きっと新たな発見があることだろう。
やや長めに説明してみたが、こうした情報も『ガンプの謎』を今日改めて見直す一助としてもらえればと思う。