重力装甲メタルストーム - Reinforced Contact :1

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Reinforcement Report

『重力装甲メタルストーム』は、一連のアイレム・アーケードSF作品の延長線上に存在していたミッシング・リンクのような作品である。

▲20世紀~30世紀にかけて人類が宇宙への進出に成功してから後の、はるか未来がこの作品の舞台だ

※画面は通常のファミコン版です

この作品をR-TYPEの外伝という位置づけで語る人もいるようだが、一言でそのように片づけるのは、実のところ難しい。

『重力装甲メタルストーム』の時代背景は3500年代である。この時代は、『R-TYPE』の作品世界(二千百年代~二千二百年代)からはおよそ1300年後、『イメージファイト』の作品世界(二千数十年代)からはおよそ1400年後の世界を舞台背景としていることになる。

時代としては直接的な関連性を認めるのが難しいという事は、この事実だけで十分だろう。

▼メタルストームが舞台とする年代は、アイレム・アーケードSF作品群を同一時間軸で扱ったとしても十数世紀、実に1000年以上もの時間の開きがある。

▼対象を コンシューマーを含めた後年のアイレムSF作品群に広げてみても、ストーリー・時代設定上の繋がりは断たれていると考えても不自然ではない。また、公議にも そのようにとらえられている向きが大勢(たいせい)だろう。

だが、時代考証の面で直接の関連性を見出せないとしても、舞台背景を深く掘り下げてみた場合には、また違った観点も垣間見えてくる。

▲ギガデスは本来、対異星人戦に備えて造られた施設だ

『重力装甲メタルストーム』にアイレム・アーケードSF作品の系譜としての関連要素を見出すとすれば、イメージファイトとの関連性を想起させる要素として、対異星人を想定した軍事装備が配備・展開されていることが挙げられる。

メタルストームの舞台、冥王星は、「対異星人戦用機動要塞(ギガデス)」として惑星破壊砲を建造されたのだ。

なお、OPの一場面中にはこれに関連する光景が捉えられている。

ここでの月の様子に注目してほしい。地球の影が月に写りこんで欠けているものと思い込みがちだが、そうではないであろうことはすぐにわかる。

▲光源やサイズを検証する限り、月は一度崩壊しているものと思わせられる
公転軌道はもとより気象環境などにも長期にわたる甚大な影響があったことだろう

まず第一の注目点として、地球と月の対比を考えてみた場合、月がこれほどの大きさであるとは考えにくい。つまり、この場面では月が地球よりも手前にあるということだ。(このような大きさの対比が生じるということは、これは冥王星から直接とらえた映像ではなく、地球に近い地点に設置された通信中継衛星などの映像を利用している画像なのだろう。)ちなみに、オリジナル版ではただ欠けたように映っている月の部分ではあるが、改作版においてはこれをより高精細にとらえた画像が使用されている。

そして第二の注目点だが、地球・月ともに球面の影は左側に作られている以上、“太陽の光は右方向から差し込んでいる”ことになる。月がこのように欠けて見えるのは球面がえぐられているに他ならない。このことから、この時代にも月にはルナティックウォーの大規模な後遺症が残っているものと導き出すことができるのである。

▼上記の場面は『Image Fight』のストーリー(ルナティックウォー:左の場面の意味)を知っていれば読み解けそうだ。なお、オリジナル版にはない要素だが、改作版においては、右の場面との関連を思わせるような光景も登場する。

※画面はどちらもAC『Image Fight』のものです

ここから推察できるのは、イメージファイトの時代に発生した事件によって、地球の衛星軌道上をとりまいているはずのアステロイド・デブリ(かつての月の地表)がほとんど見られなくなっていることだ。この時代に至るまでにおそらく、地球を覆いこむほどに飛散した膨大な量のアステロイド汚染を取り除く技術が確立しているということなのだろう。

▲奥の床面には巨大戦艦の艦影が落ちているのがわかる

※画面は通常のファミコン版です

次に、R-TYPEとの関連性を想起させる要素を扱っていこう。まず、一般的に知られている要素としてはステージ6ボス(ムーバ戦)の背景に、R-TYPEステージ3の巨大戦艦(グリーンインフェルノ)が登場することが挙げられる。

しかし、この場面には一つの謎がある。その巨大戦艦(バイド)と人類とが交戦状況下にあるような様子はないのだ。『重力装甲メタルストーム』のステージ5以降はギガデス(対異星人戦のための要塞)の中心層内であることを考えれば、それが如何に特殊な状況であるかの想像ができるだろう。

▲外見は巨大戦艦そのものに見えるが・・・

※画面はAC『R-TYPE』のものです

単純にカメオ出演とみなして追及を避けるのであれば、バックスクリーンに投影されている映像と考えることもできなくはないが、機動要塞の中枢近くに巨大な特殊映像装置が設置されている(それもステージ6と7との、都合二か所)のも何か不自然に思われる。

ここで考えられる一つの可能性は、それがR-TYPEから1300年もの時間が経っていることによる、テクノロジーの発達がもたらした光景なのではないか、ということである。

この時代には、異層次元戦闘機の研究「RX-プロジェクト」の応用技術が大幅に進展し、R(RX)系統・B(BX)系統といった戦闘機(R戦闘機)の製造技術が、スタンダードな戦闘機サイズの軍事兵器から大型戦艦クラスの異層次元戦闘兵器を建造できるまでに至っているのではないだろうか。つまり、ここで示唆されるのは、あれらが人類の手によって量産建造された戦艦であるという可能性だ。

だがあるいは、ここには今作、『重力装甲メタルストーム』のストーリーにおける最大の謎が深く関わっている事になるのかもしれない。

▲ギガデスの自爆装置の直接起動は極秘指令としてグレッグ=バートン中尉に通達された

実のところ、『重力装甲メタルストーム』では(たとえ二週目EDに到達しても)、ギガデスの中枢コントロール系統が どういう理由からなぜ暴走状態に陥ってしまったのかについては、最終的に明らかにされないのだ。判明しているのは、ある日突如として交信不能状態に陥り、あらゆる外部操作がロックされたということのみなのである。そして、主人公であるグレッグ=バートン中尉に要請された惑星破壊砲の破壊任務というのも、あくまで極秘指令として下されたものであることを併せて考慮する必要があるだろう。

ここで問題を整理してみよう。ギガデスの中枢部には、なぜか異層次元戦闘兵器とおぼしきものが存在していた。そして、その状況から推察するに、それは異星生命体ではなく人類の側が建造した可能性が高いということと、対異星人戦用機動要塞の中枢という特殊な(人目を避けるのには絶好の)場所にあったということだ。加えて、「RX-プロジェクト」を中心としたR戦闘機の製造は(R-101 GRAND FINALEを最後に)23世紀中にプロジェクトを解散させ終了したことになっている。が、その開発技術や記録等が以後どうなったのかは一切不明とされているのである。

▲R戦闘機の製造にはもともと軍の極秘事項が多く関わっていたことが知られている

※書面はR-9Customのもの

では、もし、それがこの世界における宇宙連邦の中でもトップクラスの秘匿事項であったとしたらどうだろうか。

例えば、ハイクラスの異層次元戦闘兵器(特にB系のR戦闘機直系技術による)の極秘実験・密造と、その製造過程における何らかのミス あるいは事故が惑星破壊砲の中枢コントロール系統に重大な影響を及ぼす結果に繋がっていたとしたら、である。

わずかな手がかりを元にしての一つの推察に過ぎないが、そうした(暴走状態にあったギガデスが最終判断を下すに至るだけの)背景が存在していた可能性もあるということだろう。

この件において『R-TYPE』の作品世界からの補足を付け加えておくと、メタルストームの世界からは過去にあたる、26世紀の人類によって作られた対異星人戦用の生物兵器がバイドの母体となったことが知られている。26世紀では手に負えず異相次元に破棄する事しかできなかったものと言われているが、この時代(36世紀)においてどうであるかは定かではない。

▲形式不明の謎の機体。(プレートの表示があるが機体コードともデッキ番号ともつかない)強力無比な攻撃はアトランティスの嵐とも形容された

※画面は通常のファミコン版です

なお、ギガデスの中枢部には、他にも機体名称さえ不明のR戦闘機の応用技術を利用したらしき機体が発見されていたことも併せて付け加えておこう。

こちらについても、判明しているのは、OF-1(特殊攻撃パーツ)のサーチレーザーやR-9(スタンダード/ラウンド・フォース)の反射レーザーを思わせる装備類を機体の可変機構のみによって切り替え、しかも推定される全長は約9~10m以下程度と、著しく小型化・精密化が進んでいるらしいということだけだ。

しかし、この事実も、ギガデス内部においてR戦闘機に関わる何らかの研究・製造部署が存在していた可能性を示唆する一つの判断材料にはなるだろう。

▼OF-1ダイダロスのサーチレーザーとR-9Customの反射レーザー。これらに酷似した各種のレーザーを特殊パーツ・外部ユニットも装着せず使用し、さらに変形構造をも備えていることになる。推定全長もR-9の3/4程しかないようだ。

ではここで、話題を主人公機であるストームガンナーに移すことにしよう。「重機動歩兵ストームガンナー」は、人型巨大ロボットではない。これはOPデモにも表示される機体スペックによっても明らかだ。

ストームガンナー M-308 カスタムの全高はわずか3m、これはパイロットであるグレッグ=バートン中尉の身長が186cmであることを考えれば、驚くべきサイズであることが窺われるだろう。機体背面から突き出た翼状のパーツの分を差し引くと、本体は2.5m前後しかないように思われる。

▲ストームガンナーの全高は3.0mだ。ちなみに、ここに併記されている「G-REV SYSTEM」とは Gravity-Reverse System、つまり重力反転装置のことだ。

※画面は通常のファミコン版です

ストームガンナーとはおそらく、宇宙服の延長にあるような、パワードスーツのような扱いの装着装甲なのだろう。なお、材質はゲオポリウム合金と記載されているが、これは装甲部分の素材だろう。

M-308 カスタムの他にも、作戦や任務内容に合わせ別装備にカスタムメイドされたストームガンナーが存在しているのかもしれない。

▼「ストームガンナー M-308 カスタム」は、地球連邦 第2宇宙艦隊の空間機甲師団 ブルー小隊に配備された機体である。M-308 カスタムはグレッグ=バートン中尉の専用機として使用された。

だが、ストームガンナーが真に最も謎を秘めた姿は、「G-REV SYSTEM」を強化発動したグラビティアタックの形態にある。そして、これはR-TYPEとの関連性を想起させる要素として、一般的にはまず知られていない方のものといえるだろう。

以下の分解写真を見ての通り、グラビティアタック発動時におけるストームガンナーの姿は、まぎれもなくフォースそのものらしいのである。また、グラビティアタック発動時下においては、ストームガンナーはフォースと同じくあらゆる攻撃を弾き、受け付けなくなる特徴も併せ持っていることになる。

▼肉眼では火の玉(最下段)にしか見えないが、機体はフォースのように見える形状(中段)になっているようだ。さらに言うなら、通常の「G-REV SYSTEM」使用時下におけるストームガンナー(最上段)はR戦闘機の姿を想起させる。

※画面は通常のファミコン版のデータを加工して見やすくしたものです

▲バイドを使用しない人工フォースの製造は23世紀中には成功しているが、これらとの関連性には謎が残される。

※画面はSFC『R-TYPE III』のものです

ストームガンナーの頭部形状がR戦闘機の「ラウンドキャノピー」を思わせる姿であることも併せると、ストームガンナー自体の出自もまた、明らかにはされていないながらも、一連の系譜の流れに従った機体として憶測されるものがあるということなのだろう。

▲ストームガンナーの機体形状そのものが地球側で正式に公表されている資料とは全く異なっていることにも注意を払っておくべきだろう。“グレッグ=バートン中尉の所属が地球連邦”であるとはいえ、この機体が“極秘研究の一環”として位置づけられている可能性も示唆されるためだ。
なお、作中での地球連邦と宇宙連邦の力関係や管轄の位置づけといった詳細な事情も(“ギガデスの自爆装置の作動を試みたのが宇宙連邦”によるものであり、事態収束に向けての指令系統として地球側のマザーコンピュータの判断が重視されたらしいということ以外は)明らかにはなっていない。

※出典:『転清・アート・ドット・ワークス【アートワーク編】』より

このように、『重力装甲メタルストーム』は舞台背景を掘り下げていくと、作中の様々な点において残されたミステリーが、(R-TYPEの外伝として位置付けるよりもさらに範囲が広く)一連のアイレム・アーケードSF作品の延長線上に深く融合し、ミッシング・リンクとしてますますその重要性を認めるべきタイトルなのである。この結論をもってここでのレポートは一度終了としておこう。

※本書における記述の多くは複数の設定を元に推察された内容であり、『重力装甲メタルストーム』における公式設定によって明らかにされた事実ではありません。

※ちなみに、『重力装甲メタルストーム』の発売は1991年。海外市場にて先(1990年)に発売されていた『Metal Storm』が国内向けに販売された経緯から、実質1990年制作作品としてみると、当時リリースされていたのは『R-TYPE II』(1989)までです。(≒イメージファイト以外では時代背景の設定などが存在していない頃)

※なお、SFC『R-TYPE III』は“制作が実質的にタムテックス”(アイレムに吸収されたタムテックスのメンバーが担当)とされています。


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