正史との狭間で―

FE外伝オリジナル版の矛盾や齟齬(そご)とはどういったものであるか、ここにその一端を示してみよう。

(ただし、込み入った問題を順を追って説明する都合上どうしても長くなるため、変更分のスクリーンショットなどを手早く参照したい場合はこの項は飛ばし次ページに移ってもらって構わない。)


事件の発端とされる飢饉とミラの封印について / ~地域と時期がはっきりしない!~

説明書の解説では、ゲーム開始の時期に、凶作の続くリゲルに対してソフィアの「豊かな実りは分け与えられることなく捨て去られた」、とされている。
しかし、ゲーム中の解説ではソフィアでも「このところ作物は実らない」(フォルスの台詞)とされ、ノーヴァでも「実りがなくなってすでに3年」(セリカの台詞)とされている。
とすれば事はリゲルだけでは収まらずバレンシア全土で発生しているようでもあり、事の発端とされる肝心の飢饉について、発生時期と影響範囲が全く謎なのである。

作物が実らない状態で支援を要請されてもそれに応じられないならまだしも、大陸全土が飢饉ならば、豊かな実りが捨て去られたという記述には矛盾が生じる。
なお、説明書では「大地母神ミラの力が途絶えてから2年」、とされており、ゲーム中のセリカの台詞と合わせると こちらでも齟齬が発生する。

さらに、ミラの封印について言えば、説明書では「ソフィアの仕打ち(支援要請の拒否)に怒り狂ったリゲル王ルドルフが」行ったとされているが、それならばゲーム開始時点に近い時期(便宜上 数ヶ月程度前と捉えることとする)で 封印されたことになるはずである。
しかし、ゲーム中ではミラ神殿で「突然リゲル軍が襲ってきたのです。」と、ここでいつ発生したかわからないミラ神殿占拠が報告されたうえで、「リゲル王にミラが封印されたため作物が実らなくなった」と説明されるため、前述のセリカの台詞に従えばおそらく3年前にはその状況になっていたことになり、それぞれの事件の発生時期の謎にさらに輪がかかってしまう。

そもそもとして、ミラの封印が大陸全土に影響するものであった場合、飢饉はリゲル王の自爆行為から端を発することにもなってしまう。
オリジナル版でのゲームラスト近くのマイセンの言に従えば ルドルフ王が実際にそのようにした可能性を否定できなくもないが、そうすると今度はソフィアが豊かさ故に事件を発生させたという流れにはならないのである。
(ソフィアも飢饉になっているはず、となるため)
このように、オリジナル版の説明ではどこで何が起きどうなってゲーム開始時の状況になったのか、本当のことが全くわからない状態なのだ。

なお、公式攻略本では三年に及ぶ飢饉にさらされたルドルフ王が「マイセンに願いを託して国に帰った」という主旨の説明がなされており、時系列の混乱はストーリーの核心部分にも飛び火し謎の度合いが増してしまう。


王家の者が殺されたという(くだり)について / ~前後関係が定かでない!~

ゲーム中ではソフィア城で「ドゼーが王家に生まれた子供達をこっそり殺していった」(それを止めようとしたマイセンが罪をかぶせられ城を追われた)ということになっているが、この言葉通りであれば、この件は最低でも16年は遡る昔の話になるはずである。
(そうでなければ生まれてすぐの子供を(かくま)うことなどできないため)
しかし、別の人物からは「王家の人達はドゼー将軍によってみんな殺されました。」と ゲーム開始に近い時期に発生したかのように語られる。
(十何年も前から暗殺が噂される人物を城に長く留めるられるものかと考えるまでもなく、もとより周知の事実ならばドゼーの方が城にいられなかったか王となっているはずである)
ここでもそれぞれの説明と発生時期が謎を呼ぶことになっている。

なお、説明書ではこれ(王家の者の暗殺)はルドルフ王がミラを封印してから後という、ゲーム開始時近くであろう出来事として説明されている。
(マイセンについては「数年前にリゲル王国への援助について衝突し城を追われた」とされている)
しかし、公式攻略本では「ルドルフ王の支援要請を拒否したのちマイセンを城から追い出したドゼーが王家の者を次々と毒殺」という旨で説明されている。
(公式攻略本では前述の通り三年に及ぶ凶作にあえいだリゲルとルドルフ王とされるため、一連の出来事全体がゲーム開始時近くの出来事として受け取れるようになっている
付け加えておくと、公式攻略本ではドゼーが国王夫妻を殺害する際にマイセンが王女を救出したともされており、城を出た時期が一致しないどころか もはや事実が書かれているとは思えない時系列で出来事が語られている)
このように、王族の殺害についてもマイセンの追放についても、時系列的にも理由としてもそれぞれに別々の説明がなされているのである。
(ミラの封印と飢饉との時系列がからんで、さらに前後関係が各々であやふやになることも加えておく)

以上のように、ゲーム内では説明がつかない点を公式的な参考文献をたよりに、としても、逆に混乱が増していってしまうのだ。
オリジナル版の展開については、もはや「そのように説明したかった者がいる」と判断するべきに至るわけである。


ソフィアとリゲルの関係性について

ゲーム中では関係性が悪化した様子の解説に重きが置かれており
ドーマとミラの解説でも対立の方がクローズアップされている。
説明書でも「長い間ふたつの国はそれぞれの道を歩んでいた。」とあるが、ゲーム中ではソフィア城で「王家の(つるぎ)はリゲルより友好の印として贈られた」という主旨の台詞があり、公式攻略本にも「数百年を平和のうちに共存し続けた。」とされている。
本編ED後の展開を考えれば、この件についても対立感を主軸として判断するべきではないだろう。


リゲルの国内でも主神を「邪神」と呼んでいる

普通に考えて、自国の主神を「邪神」と呼ばわる者があるだろうか?
何か別の事情でもない限りこのような発言はなされないはずである。
しかし、オリジナル版では、国王 自らがそのように発言してしまう。
オリジナル版を編纂した者の何らかの意図が加わっているものと判断するには十分ではないだろうか。
(オリジナル版の言説のまま額面通りに受け取ると、EDでその邪教を統合してしまう流れにさえなってしまうのである)


このように、あらすじを追っただけで疑問点は矢継ぎ早に表れてきてしまう。(これらは代表的な点だけであって深掘りしようとすればもっと多くの謎が生まれてくるのだが、それらについてはまた別に扱うことにしよう。)
その上でゲーム内、説明書、公式攻略本、どの説をとっても つじつまが合わなくなる これらの謎に一定の解消を求めたときに、『ノーヴァ写本』という歴史書を紐解く、という形で体験できるようにしたものが、ここで公開する改作版なのである。

そのため、改作版は、舞台背景や各種設定などが全てリセットされ 一から組み直したに等しい状態で物語が語られていく。
(この詳細についてもまた別に扱うこととする。)
オリジナル版のゲーム内、説明書、公式攻略本、どの話とも違っているものの、一本の筋道に整理統合されたシナリオに編纂し直されていると思ってもらえばいい。

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