グラディウスII -SAEGUSA- 特集紹介
見所満載?! 何が違う、どう違う?

FC版『グラディウスII』のグラフィックは、FC円熟期ならではの高いレベルの作画・表示技法が導入されてはいたものの、アーケード版の衝撃的なグラフィックとはその趣が異なる仕上がりとなっていた、ということについては、パッチ紹介ページでも触れておいた。

そしてそこでは、当サイトで公開されている『グラディウスII -SAEGUSA-』が、“オリジナルをよりオリジナルらしく”するためのものであることも、併せて述べられていたはずだ。

※画面は改作版のものです

それというのは、もともと驚異的な完成度であるオリジナル版から 見た目以外の部分については何ら変更していないということでもあるのだが、ただ、今作における“より本質的なFC版らしく”というキャッチの真意、その「本質的な意味合い」については、パッチが公開されてからこれまで、使用者側がプレイしたときに感じる各々の印象にまかせるものとして、特には明示されずにいた。

では、『グラディウスII -SAEGUSA-』で もたらされている“オリジナルをよりオリジナルらしく”という部分・・・“本質的なFC版らしく”とは、そもそもどのような観点による意向だったのだろうか?
このページでは、それをFCオリジナル版『グラディウスII』との比較紹介によって一歩踏み込んで明らかにしてみたい。

冒頭から、違う。

まず、何より端的にわかりやすいのはOPデモだ。連続写真を元に比較してみると、パッチ制作の意向ともいうべき思想はここですでにぶつけられているということがわかる。

※画面は全てFC版オリジナルのものです。

まずは、オリジナル版から。アニメーションにより縁取りのロゴが表示された後、「II」の文字が後からフラッシュして加わるこのタイトル表示アニメは 短いながらも趣向が凝らされており、当時でも人気が高かった演出だ。

※画面はどちらも改作版のものです

改作版では、このロゴ表示にいたるまでのプロセスが変化している。縁取り後、ロゴの変色とともに、上下部分がフラッシュし・・・

※画面はどちらも改作版のものです

その後、瞬間的にロゴの内部がグラデーションで満たされる。そこからさらに色調が一気に反転してタイトル画面になるのだ。

プロセスが変化しているといっても 正確に言うと内部処理そのものに変更は加えられていないのだが、それを逆手にとりつつ、オリジナル版にはなかった“ロゴの内部までを生かした演出”へと変貌していることがわかるはずだ。FC版の全体的なイメージは踏襲しつつ、さらに美しく、より力強く感じさせるようなアプローチがなされているのだ。

“再現”ではなく、
“昇華”―――

こうした手法が使われているのはタイトル画面だけではない。実のところ、ゲーム中のほぼ全般において 同様のアプローチがとられているのだ。
ここからはAC版『グラディウスII』との比較も交えながら、わかりやすいところをピックアップしてみよう。

※画面はどちらも改作版のものです。

エイリアンステージを比較しながら見比べてみると、改作版では、背景はFC版のイメージを踏襲しつつも より渋みのある質感の色使いに、敵キャラクターの方はAC版のイメージを踏襲するような配色へと改められているのがわかるだろうか?
このステージでは、FCオリジナル版の 背景側からも生体的なイメージを感じさせるような趣向を残すために、意識的にFC版の色使いを踏襲しているのだ。

※画面は改作版のものです

クリスタルステージの方では逆に、改作版の背景は AC版のイメージを踏襲したような配色に、そして浮遊するクリスタルの方は FC版のイメージを残しながらも透明感を感じさせる色使いに変更されている。

これは、実際にプレイするときの感覚を優先させた結果、背景は AC版よりもさらに抑え目の目立たない配色に、浮遊物は動きの激しい障害物としてあえて目立たせるような配色にとそれぞれ意図的に改められたためだ。
改作版の、FC版とAC版を折衷したような配色は このような観点も含めた上での答えでもあるのだ。

また、色使い以外についてさらに言えば、クリスタルそのものは、質感を向上させるために元の輪郭は生かしながらも FC版とAC版のどちらにもよらない描き込みになっている。イメージを優先して あえてどちらにもよらない手法をとっているところもあるということだ。

※画面はどちらも改作版のものです

ある意味、このことが端的につかめるのはモアイステージだろう。改めて比較してみると、改作版の描き込みは全体的にAC版のイメージを踏襲してはいるが 色使い的にはFC版よりのようでもあり、どちらとも差を感じるようでもあり、と思えるのではないだろうか。だが、この件についての答えは、次のスクリーンショットでの比較を見れば一目瞭然だ。

ここで比較に持ってきたのは、なんとPCエンジン版である。実は、モアイステージの色使いはPCエンジン版の同ステージを参考に配色換えが行われたというわけだ。
この比較を見れば、改作版が出典や再現という事にはさしてこだわらず、見栄えとメリハリを重視して物事を進めたのだということがわかるのではないだろうか。

細かすぎて伝わらない物種

改作版で独自の判断により手を加えられている部分は、さらに細かいところにも及んでいる。アニメパターンの変更など、一度気付いたらハッとさせられるような隠し要素があるかもしれない。

代表的に全く伝わらない変更点といえば、ゴーレムの目のアニメーションだ。何も考えずに見過ごしてしまう人も多いが、気付いた人は大抵驚くというあたりが粋なのである。
そして、実は腕そのものも全く違う。

※画面は改作版のものです

さらに全く伝わらないのは、クリスタルコア直前に構える破壊不能な浮遊クリスタルのアニメパターン。
実際、プレイしている側はそれどころではない場面だけに、横で見ているときに初めて気付く程の まじまじと見てしまうようなキラキラ感が なんだか はかなげである。

伝わらないといっても、むしろ見る側に気付かれないように行われた変更もある。

例えば、このフェニックス。実はアニメパターンも含めた大部分のドットが ある問題から打ち直され、見栄えがよくなるように変えられている。ある問題というのは、内部的にはステージ1の配色の諧調がオリジナル版とは全く違っていることによるものなのだが、むろん判らないようにやっているため、よほど注意深く見比べない限り普通は気付かないだろう。
全体的な立体感の違いくらいならば、比較して見たときにであれば判るかもしれない。

カバードコアもフェニックスと同様の変更が加えられている。パッと見で色数が増え質感が増しているように見える(硬質的な印象に感じる)のは、配色を工夫して大部分のドットを打ち直しているため。これもおそらく普通には気付かないだろう。

※画面は全て改作版のものです。

改作版ではこのような変更が、目立つもの・目立たないものに関わらず加えられている。
改作版をプレイしたときに、何故か爆発パターンが美しく感じられるとか、背景の星や 高速スクロールの丸型障害物がどことなくオリジナル版よりも立体的に感じる、などとうっすらでも思った人。その感覚は間違っていません。

素材を活かす

ここまで進めてきた紹介では、改作版はFCオリジナル版からかなりの部分を変更しているように感じるかもしれない。

だが、パッチ紹介ページでも述べたように、FCオリジナル版の作画技術は“もともとかなり高い”のである。見栄えがしなくて伝わりきっていなかったであろう そうした部分については、改作版ではあえて手を加えていない。

※画面はどちらも改作版のものです。

ステージ1などはその代表格だ。見栄えが悪く感じられたごく一部のパーツ以外ほとんど手を加えていないが、元のスタッフによる仕事がいいために、配色の変更だけでも相当な仕上がりを見せている。
このことは、実際に動いている姿を見ればより強く感じることだろう。

※画面はどちらも改作版のものです

ステージ2の背景についても同様だ。ステージ2の背景パーツは、全くといっていいほど手を加えていないが、配色の変更だけで質感はかなり向上している。
ちなみに、ここでも触手は全くの別物になっているのだが、“元絵”(参考出典)が一発で判る人はかなりの通である。

※画面はどちらも改作版のものです

ステージ3前半も、手を入れていないが相当な仕上がりに見えるようになった顕著な例だ。ここではさらに、敵キャラクターの側にもほとんど手を加えていない(ジャンパーにわずかな線が加わったくらい)にも関わらず、配色を変更しただけで質感は驚く程向上している。この事実だけでも、FCオリジナル版の作画技術は“もともとかなり高い”というのが嘘ではない事がわかるはずだ。

※画面はどちらも改作版のものです

この場面ではさらに、元のドットを活かした上で、色使いさえも明確にFC版よりの配色イメージを強く残している。
こうしたところを踏まえてみると、改作版があえて“本質的なFC版らしく”と銘打っていることの意味がわかってくるのではないだろうか。

“オリジナルをよりオリジナルらしく”
ということ―――

※画面は改作版のものです

さて、ここまで見てきたことで“オリジナルをよりオリジナルらしく”、そして“より本質的なFC版らしく”と述べてきた事の意味が伝わっただろうか。
ここではこれまでに紹介しきれていない場面も含めてスクリーンショットをまとめて公開しておこう。

※画面はどちらも改作版のものです

※画面はどちらも改作版のものです

※画面はどちらも改作版のものです

※画面はどちらも改作版のものです

※画面はどちらも改作版のものです

※画面はどちらも改作版のものです

※画面はどちらも改作版のものです

※画面はどちらも改作版のものです

※画面はどちらも改作版のものです

※画面は改作版のものです

さて、長く説明してみたが、これで改作版で銘打った“より本質的なFC版らしく”という事の真意が伝わったかどうかということは、実のところわからない。

だが、成果はさておき、今作の紹介はこのくらいにしておこう。(さらに気になるところがあれば個人で比較することはたやすい事でもあろう)

最後に、改作版の“より本質的なFC版らしく”の内訳をあえて別の言葉にしておこう。それは、「FC版のイメージを残しながら全体的な質感の向上を図る」という明確な目的のもとで、FC版のオリジナル部分を生かすためになされたということだ。

さらに言うなら、そのためにAC版とFC版(や さらに+α)のイメージを折衷して掛け併せながらも よりハードウエアの表示の可能性を感じさせるような、ハイブリッドな仕上げを導き出したということなのだ。

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