「時代が生んだ奇跡」「FC史における怪物的作品」「アイレム・アーケードマニアにとっての至高の名作」「知られざる最強タイトル」「悲運の良作」・・・
『重力装甲メタルストーム』を語る言葉は数あるだろう。そして、ここに挙げられた そのどれもが正しい。
▲多重スクロールと細かい動きが魅力だ
※画面は通常のファミコン版です
『重力装甲メタルストーム』といえば、ごく一般的なFCユーザーには まず知られてこそいないものの、FCの画像処理について多少なりとも興味のある者ならば知らない人はいないというほど、その筋には名が浸透しているタイトルでもある。
だが、一般には広く認知されていないからといって、この作品は単に画像処理技術のみが突出しているだけのC級タイトルなどでは決してない。むしろ、その程度に とどまっていなかったところにこそ その快作ぶりがある。
なにしろ、『重力装甲メタルストーム』は、ゲームとしてプレイした場合にもFCアクションゲームにおける五指、いや三つの指に入れてもおかしくないほどの特A級の完成度を誇る作品でもあったからである。
その突き抜けたゲーム性は、プレーヤーをして「FCオリジナル作品なのにアーケードゲームそのもの」と言わしめるほどだ。
▲全編アーケードゲームのような迫力だ
※画面は通常のファミコン版です
『重力装甲メタルストーム』が「アーケードゲームそのもの」と評される理由には、大きく見て二つの視点がある。
一つは、あらゆるステージの展開や仕掛けなどが、80年代末~90年代初頭までのいわゆるアーケードゲーム花の時代、とりわけアイレムシューティング黄金期の匂いに満ち満ちている事だ。こちらは、独創的なシステムやゲーム内容そのもののテンションがもたらしている印象といえるだろう。
もう一つは、随所に散りばめられた演出やメカデザインの数々が、本家本元のアイレム・アーケード作品群の魅力を思う存分引き継いだ、充実した雰囲気を醸し出している事。これは、設定などの舞台背景やグラフィック面などによってもたらされている印象の側になる。
▲アイレムファンならば唸らずにはいられない 垂涎モノの構成で全開なのだ
※画面は通常のファミコン版です
少し例を挙げるだけでも、『イメージファイト』を思い起こさせる背景デザインやザコ敵の爆風、ボス撃破時の『最後の忍道』ばりのド派手な爆発、『R-TYPE』を思わせる主人公機のデザインと一部の背景などなど、作品中のそこかしこに漂っている。特に高次面のBGMなどはアイレムシューティングそのもののリズム感と爆発力である。その勢いたるや、完全な独立タイトルでありながらスピンオフ作品にしか見えないほどなのだ。
といっても、言わずと知れたことであるが、『重力装甲メタルストーム』は、アイレム謹製作品ではない。制作はタムテックス。彼らの執念が世に送り出した魂の結晶である。今となっては知るよしもないが、アイレム・アーケード作品群の魅力に憑かれた集団だったのか、いずれにせよ、そこにまたこの奇跡が生まれた一因があったのかもしれない。
もちろん、細かな部分の模倣はあくまで大元の作りの良さがあってこその補強材料にすぎない。アイレム既発作品の模倣にとどまらず、“いかにもアイレム的”な、特異さで小躍りしたくなるステージアイデアやボスデザインなど、オリジナル作品として押さえるところは確実に押さえた作りこみぶりがあったうえで、一段と“本家の香り”を放出させていることを忘れてはならないだろう。
▲究極にして至高
それがメタルストームだ
※画面は通常のファミコン版です
これらの要素が混然一体となって、“これぞアーケードゲーム!”“これぞアイレム!”と脳髄に直感的に認識させるため、「これがFCオリジナルとは信じられない。」「アーケードから移植されたタイトルでもここまでの作品にはそうはお目にかかれない。」「むしろアーケードでもここまでのものには出会い難い。」と、アイレムファンが否応なく心酔させられる一騎当千の奇跡の名作と言っていい。
まさに「FCなのにFCをプレイしているとは思えない」強力なトリップ感をもたらす超絶タイトルなのである。
しかし、ではなぜ それほどまでの完成度を誇る作品が、今回ここで取り上げられることになったのだろうか?
その理由については、以下のスクリーンショットを参考にしてもらいたい。
『重力装甲メタルストーム』のオリジナル版には、配色の面などで見づらさを感じさせる場面が少なからずあった。敵弾の視認性についてもまたしかりだ。
このような箇所に手を入れ、よりプレイに熱が入るような、見栄えに変化を持たせる試みを行ったのが ここで紹介する改作版なのだ。
当然のことながら、この改作ではゲーム内容についての変更は行われていない。見た目に関する部分を、オリジナル版の意匠を残しながら さらにすっきりとした印象を持たせる方向にシフトさせる内容が主となっている。
ここでは、それらの ほんのさわりの部分を紹介しておこう。
▲オリジナル版ではステージ前半・後半ブロックとも配色は同じだったが、改作版ではブロック毎に はっきりした変化がある
▼単純に背景の色が違っているだけではないぞ。キャラのボリューム感なども細かく変わっているのだ
▼中には演出面を強化する目的から あえて多重スクロールの仕方を変えている場面まであるのだ
このように、画面写真だけでは伝わらないような変化を加えている個所もあるので、オリジナル版のファンであればあるほど、その違いを楽しめるようになっているはずだ。
ゲーム中のグラフィックだけではなく、デモ画面などにも細かく手は入っている。ストーリーテキストの文字なども、より読みやすい形へと大幅に変更が加えられ、また、その文面も意味が通りやすくなるように校正し直されている。
▲ストーリー紹介は、これまで説明書にしか記載されていなかった内容も加えて再編集されているぞ
▼もともとアニメ作品ばりだった場面も、さらにその毛色を強められているのだ
▼タイトルもパッケージ側のロゴと折衷して新規で書き起こされたものになっている。まるで80年代アニメのような雰囲気
また、デモも含めた一部の場面には、無意味に手が入ったわけではない仕掛けも加えられている。
それがどういった意味を持ってるのかは、また別に扱うこととしよう。興味のある人は、次ページに進んでみてほしい。